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大阪のJazz Studio"K'z"のブログ
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うちのバカボン。

最近おしゃれに目覚められたご様子。
帰郷の際はいつも新しいデザイナーブランドをご着用。

しかしながら、自分の仕事着である、
サラリーマン御用達のスーツの新規購入には
全くの意欲なし。
数着しかないスーツの手入れについて聞いてみても
『うん、悲惨!』としかいいません。

『もし転職するなら、スーツ着ないでいい仕事にする!』
とも。

巷で時折みかける膝の出たズボンを履いた、
よれよれおっさんのスーツ姿が目に浮かび、
矢も立てもたまらずせめて身ぎれいにと、
ズボンの折り目をつけるズボンプレッサーなるものをバカボンに送付。

それから約一ヶ月。
バカボンからは何の音沙汰もなく、
もちろん、サンキューメールもありません。
使い心地はどんなもんかいな、
役に立ってるかなと、
ちょっといたずら気分でズボンの折り目の写真を
送付せよとメールしました。

返事は、
『今、忙しいからまたあとでね』と。
そしてまた1週間が音沙汰無く経過。

このヤロー!
届いた荷物の梱包すら解いてないに違いない!
 
きっと本人にはズボンの折り目に対する重要性の
認識がないのでありましょう。
世の中にはズボンの折り目よりも大切なことがたくさんあり、
人間の中身はズボンの折り目に左右されるものではない!とでも
思っているのでしょう。

職種は違いますが、
私が駆け出しの歌手として仕事を始めたとき、
歌がうまくなることは勿論当たり前としても、
どうすれば一人前のプロとして認めてもらえるのか、
どうすれば西も東も分からないこの業界でここに私がいると、
知ってもらえるのかと自問自答しました。

今よりも歌手人口は少なかったし、
プロが尊ばれる時代で、おまけにホテルで仕事を始めた私は
ある意味恵まれていたにもかかわらずです。

私の仕事場であるこのホテルのバーは当時有名で、
東京からのピアニストや関西の大御所が出演され、
最上階のラウンジのステージでは専属バンドが毎夜演奏、
余裕のある大人の遊び場所としていつも賑わっていました。
そこに出演していた私は関係者として、
一流の外タレのショーを裏から覗き見できたり、
有名人や粋でおしゃれなお金持ちのお客様・・・
世慣れぬ私にはそう見えました・・・と身近に接する機会もありました。
そんな環境の中で恥ずかしくないようにと、
お金もないのに身だしなみにはずいぶん気を使っていました。

歌うことだけで精一杯の駆け出しの私でしたが、
これで食わねばならぬという絶対的な必要から、
キャリアを始めた当初から私はプロなのだという
やみくもな自覚を持っていました。
しかし何がプロとアマを分けるのかという、
明確な違いに気づいたのはあるイベントでのことでした。
これはホテル内ではなく営業と呼ばれる
外部のエージェント発注の仕事でした。

ホテル内では、今思えばまだ初々しい私(!)を、
先輩諸氏が大事に守ってくださっていたのでしょう。
事務所内でも仕事場のバーでもホテルイベントでも、
素人然とした私の外見について注意を受けたことはありませんでした。

もう場所も覚えていないどこかのイベントホールの楽屋で、
化粧を終え、衣装を着て出を待っていました。
そこへこの仕事のプロモーターが来られて、
私に目を留めて、こう言われたのです。
『早くお化粧して、着替えてね、もうじき出番だから!』と。
私のマネージャーが言いました。
『もう化粧も衣装も仕度済みなんですが・・・』
絶句したそのプロモーター氏の顔が忘れられません。

そのときはじめて気がつきました。
ホテルという仕事場で恥ずかしくないようにと、
通勤着にまで気を使っていたけれど、
自分の本来の勝負着であるところの衣装を、
日常感覚で選んでいたと。
本来仕事に向けるべき熱意を環境に惑わされて
見栄をはっていたのだと。
それまで仕事していたホテルのバーでは、
客席が近いので問題はなかったけれど、
1段高いステージでは特別な化粧や衣装が必要なのだと。
日常感覚で常識的に美しいと思える装いや化粧は、
ステージという非日常の世界では通用しない。
ステージというライトに照らされた非日常の場所には
そこで通用する常識があり、日常の常識をそこに持ち込むなど
この世界では非常識きわまりないのだと、
誰も教えてくれなかったけれどそのときはっきり悟りました。

プロとはその場に見合う存在でなければいけないのだ!
パフォーマンスも外見も!
自分の満足のために歌うのではなく
聞いてくださるお客様のニーズに応えるのだ。
プロとはその場で要求されることを、
提供できなければならない!
これが大前提です。

自分が歌いたいから自分のために歌うのはアマチュアです。
アマチュアでいるのが一番楽しくて美しく、またうまい人が多い!
でもこのプロとアマの違いを忘れてはならないのです。

歌い手にとって衣装や化粧は、プロとしての仕事着です。
Payされる自分のパフォーマンスを素晴らしくみせるための小道具です。
それにはその場にふさわしい最大限の努力を払わねばなりません。

プロのサラリーマンにも同じことが言えると思います。
自分の仕事に誇りを持つなら
その仕事着をないがしろにするべきではありません。
何も高いスーツを着ろといっているのではありません。
遊び着には大枚のお金を費やしておきながら、
そこから収入を得ている仕事着に敬意を払わないのは、
考え違いだと思うわけです。

 この母の心を知ってか知らずか、
お小言メールには、これまた何の返事もありません。

・・・と書いてブログをあげたら、
バカボンからズボンプレッサーの添付写真付きでメールが来ました。
只今絶賛稼働中と書かれております。

ひょっとしてバカボンは私のブログの隠れファン?

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プロフィール
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びわももよもぎ
性別:
非公開
自己紹介:
枇杷、桃、蓬はもう一生食べられないアレルギー体質の私。
アレルゲン山ほどの世の中で、
負けずに闘う
アレル(荒れる?)バスター、
ここにあり〜だぞ!!!
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