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大阪のJazz Studio"K'z"のブログ
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前回の『夏休みの夜は更けて』の項で話題沸騰した、
2曲に対する考察です。

前出の『想い出のサントロペ』は、
作詞 MIchel Vaucaire  作曲 Francis Lai
創唱 Cora Vaucaire (作詞のMIchel Vaucaire の妻です)

この曲の初出が何年かはっきりしないのですが、
Cora Vaucaireの生年が1922年とあるので、
シャンソン歌手としてこの曲の内容を歌うには
年齢的にどんなに早くても1950年代以降であると思われます。

日本語訳詞は、

この夏はサントロペにはまいりません
お借りしたあの家にはまいりません
この夏はサントロペにはまいりません
他のどなたかにどうぞ貸してください

あなたの家はとても美しく海の夜風がいつでも吹いていました

この夏はサントロペにはまいりません
とても楽しみに仕度もすんだのに
この夏はサントロペにはまいりません
望みをなくし彼も今はいません

あなたの家はとても美しく幸せに満ちた去年の夏でした

この夏はサントロペにはまいりません
私も彼も二度とは行けません
やがて誰かが私を捕らえます

いとしいあの人を、今、殺しました

ここでいともやさしく穏やかな後奏が流れ、
独白がかぶります。

Mon cherie madame,
この夏はサントロペにはまいりません
今年もこれからも・・・

と、多分フランス語の詞では、
毎年借りている貸し別荘の女主人に宛てた手紙の形を取っているので、
書き出しとして、
Mon cherie madameが入っていると思われます。


さて、一方の
『Miss Otis Regrets』
作詞・作曲 Cole Porter
初出は1934年 ロンドンのSavoy Theatreでのショーです。
Porter自身、この曲はカントリーからインスパイアされたと語っています。

この曲の歌詞はMiss Otisという上流階級の女性の言葉を、
召使がLunchを約束していた女性に宛てて、
伝える形を取っています。

Miss Otis regrets
She’s unable to lunch today,Madame
Miss Otis regrets
She’s unable to lunch today
She is sorry to be delayed
But last evening down in lover’s lane she strayed,Madame
Miss Otis regrets
She’s unable to lunch today

When she woke up and found that
her dream of love was gone,Madame
She ran to the man 
who had led her so far astray
And from under her velvet gown
She drew a gun and shot her lover down,Madame
Miss Otis regrets
She’s unable to lunch today

The mob came and got her 
and dragged her from the jail,Madame
They strung her 
upon the old willow across the way
And the moment before she died 
She lifted up her lovely head and cried,Madame
Miss Otis regrets
She’s unable to lunch today

Miss Otis regrets
She’s unable to lunch today

Miss Otis は残念に思っております
ランチをご一緒できなくて・・・からはじまり、
多分箱入り娘だったこの女性が、
悪い男にだまされ、捨てられて、
その男を銃で撃ち殺し、
暴徒の群れに留置場から引き摺り出されて
柳の木に吊るされるまでが召使の言葉で語られます。

この両曲における類似点は、
いわゆる愛憎のもつれの女性によるMurder Songであることと、
多少ひねりはあるものの、シチュエイションの語り口が、
手紙と召使の伝聞というドラマを見るようなアプローチであることです。

洋の東西を問わずこの手の話は世間を賑わす材料としては、
ありふれた話で、アメリカとフランスで同時に書かれたとしても、
不思議はないのかもしれませんが、その切り口があまりに似ているので、
メンバーの『おんなじやんか!』発言となったわけです。

まず、初出はPorterは1934年とはっきりしています。
先にも書いたように『サントロペ』を最初に歌ったCora Vaucaireは
1922年生まれなので作品としては、Porterの『Miss Otis』のほうが
先に発表されているのは間違いないと思います。

PorterはながらくFranceで暮らし、
有名なシャンソン歌手のEdit PiafはPorterの『Miss Otis』を歌っているのです。
そしてMichel VaucaireというCoraの夫は、
Edit Piafに楽曲を提供しています。

そこで私としては、推察の域をでませんが、
Michel Vaucaireは『Miss Otis』にインスパイアされて、
後年『サントロペ』を書いたのではないかと考えます。

何よりもこの二つの曲が悲劇であるにもかかわらず、Majorで書かれていることです。
この時代のシャンソンにこの内容でMinorが使われないのは稀有なことと言えます。

『サントロペ』の作曲者Francis Laiは後に映画音楽で一世を風靡しました。
『男と女』『白い恋人たち』『ある愛の歌』など、
我々の学生時代にはリアルタイムのヒットナンバーでした。
彼らがこの時代にアメリカ音楽の影響を受けていないはずはなく、
きっと作詞・作曲の二人は『Miss Otis』を意識したに違いありません。

『フランス版のMiss Otisを書いてみよか!』てな言葉が交わされたかも・・・

結論として、
名曲『想い出のサントロペ』は『Miss Otis』なくしては、生まれ得なかった!
・・・勝手な想像ですが・・・何かうれしい!
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枇杷、桃、蓬はもう一生食べられないアレルギー体質の私。
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